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眠い魔法生物と車の旅

仙台公演当日。

当日の現場の様子を報告したかったのだが、現場入りのその前に。

この日、起床したのは5:30。

目が覚めるとギリギリの女王はもう既に出発の準備をしていた。

聞くところによると、どうやら早起きしたわけではない。

そう、彼女は寝ていない。

ただそれだけのこと。

相変わらずギリギリの女王は、その名に恥じないギリギリモーニングを確実に遂行してくれている。

決して裏切らないギリギリっぷりだ。

なっきーの場合、本番直前までが準備時間である。

寝る時間もしっかりきっかり準備に使い切る。

本番前の、楽屋で落ち着く時間すらも準備時間の一部だ。

もうあと10時間早く準備を始めていれば、寝る時間も楽屋の余裕もとれるだろうに……と思うこともあるが、そういう問題ではない。

10時間の余裕を取れば、その時間もうまいことフルに活用して結局寝ずに本番をむかえることになる。

お金を稼いだ時に、稼いだ額が多かろうが少なかろうが、1ヶ月で上手にきれいにお金を使いきる人と同じで、時間に余裕があろうがなかろうが、この人はきれいに時間を使い切るのだ。

ある意味特技である。

こんなにも時間をギリギリに使いきれる人がほかにいるだろうか。

さぁ、そんななっきー。

この日の朝は、出発早々運転しながらボヤきが止まらない。

「あー、眠たい眠たい眠たい」

そりゃそうだろ、寝てないんだから。
仕方なく、運転を交代しましょうかと声をかける。

普段、車で現場入りする時はなっきーが運転する。

なっきーの車をなっきーが運転することに、こちらとしてはなんの違和感もない。

しかし、たまに現場でこんなことを言われることがある。

「へぇ! なっきーさんが運転されるんですね」

どういう意味の驚きなのかはわからない。

男女のコンビの場合、男が運転するイメージがあるのだろうか?

なっきーは小柄なので、運転するとしても軽自動車のようなコンパクトカーのイメージがあるのだろうか?

それとも 「おいカナト、車の中は加湿器つけとけって言ったよね。ポテチは? 足湯は? ほんとあんた使えないっ」 と、後部座席でのけぞる姿を想像していたのだろうか。

なんにせよ、昔からこのスタイルなので、なんの疑問もなく僕はいつも通り助手席にちょこんと座っている。

僕的には、なっきーが運転する理由は他にもある。

⚫現場までの道のりをよく把握している。

⚫最寄り駅などで拾ってもらうことが多い。

⚫運転席のシートがなっきー仕様になっており、非常に狭い。動かそうにも荷物がパンパンすぎて後ろにスライドできないことがある。

⚫「わたし運転好きじゃんね?」とよく言っている。

⚫さらには、僕は運転がさほど好きではない。

などなど。

だから基本的に運転はなっきーにお任せすることにしている。

もう一度言おう。

なっきーの車をなっきーが運転する。

これのどこにも違和感はない。

しかしだ。

今回はさすがに朝から「眠い眠い」とうるさいので、ここは代わらせていただくほか選択肢がなかろう。

それに、少しでも寝て頭をスッキリさせていただかないと僕も非常に困る。

なぜなら、寝てないなっきーは、昨日のリハーサルでやった内容や決めたセリフをキレイさっぱり忘れる。

あんなに言っても、あんなにやっても忘れる。

その場ではあんなに余裕な顔して「オッケー♪」と言っていたのに、だ。

決めたことは覚えてるが、内容を忘れてしまい「あれ、なんだったっけ?」となるならまだわかる。

なっきーの場合はそんな甘っちょろいもんじゃない。

「えっ? そんなこと言ってたっけ? はは、それすら覚えてないや。ガッハッハ」(手を叩きながら)

という忘れ方。

もう、実に清々しい。

まるで記憶を消す魔法をかけられたかのような忘れっぷりだ。

いっそのこと、眠いこともギリギリで間に合わせる考え方も忘れさせてやってくれと、いま流行りのファンタスティックな魔法使いにお願いしたいところだが、こんなに寝ないギリギリの魔法生物はさすがの彼もお手上げだろう。

とにもかくにも、全ては寝ていないせいだと僕は思っている。

お願いだから寝て欲しい。

しっかり寝ることも、本番でいいパフォーマンスをするための準備なのだと思い改めて欲しい。

という願いを込めて運転を交代する。

運転を代わった瞬間に、「寝ます!」と勢いよく寝る宣言。

フードを頭まで被って、小さな体をさらに小さく丸めて助手席で眠りに落ちる魔法生物。

それを横目で見ながら、「昨日のリハを思い出せぇ~。思い出せぇ~」と、思い出しの魔法をかける。

さて、予定より早く仙台に入ることが出来たのでコンビニに寄ることにした。

「あー! 足が痺れたー!」と騒ぐ魔法生物。

寝起きまで本当に騒がしい。

僕は聞こえないフリをしてコンビニへ。

買い物を済ませて戻ってくると、助手席では恒例の特殊メイクタイムが始まっていた。


(なっきーはいつも『顔を作る』という言い方をするが、化粧をする度に「どう? まともになった?」と聞いてくるのはやめて欲しい)


これも見慣れた光景である。

顔を作りながら、ニンマリとなにやら楽しそうな顔づくり名人。

「この車さぁ、助手席に鏡がついてるのね~。知ってたぁ? 便利~。ふふふ」

いい気なものだ。

さぁ、現場まであと少し。

コンビニを出発するぞ、と思ったら今度は

「なっきーのエクレアは?」

しらんがな!!!!
ザッ-( º言º)-パー ン

どうしてもエクレアが食べたかったらしい。

エクレアを求めて小走りにコンビニへ消えるなっきー。

購入して戻って来ても騒がしさは止まらない。

「ねぇ、ちょっと聞いてぇー! エクレアなかったのー」

しらんがな!!!!(×2)
ザッ-( º言º)-パー ン

心の荒波を抑えつつこう返す。

カナト「で、なににしたの?」

なっきー「コーヒーゼリー。いちばんエクレアに似てるから」

ニテル? (゚Д゚) ハァ?


コーヒーゼリーがどうエクレアに似てるのか?

僕の感覚では、エクレアがなければシュークリームかチョコ系の何かを次の候補にしそうなものだが、なっきーはコーヒーゼリーをチョイスした。

カナト「え? どこが似てるの」

なっきー「えー! いちばん似てるじゃん。色が。見てよ茶色」

いろ!!!!!!

(;゚ロ゚);゚ロ゚);゚ロ゚)イロ!!

もうこれ以上この話を深掘りするのはやめにしよう。

うん、それがいい。


コーヒーゼリーで満足そうだし、まいっか。

さぁ、現場に到着だ。

本当に朝から疲れる。

この疲れをきれいに忘れる魔法を是非かけてほしい。