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この日は音響さん

2月19日。

埼玉のとある幼稚園。

この日の僕は、なっきーショーの音響担当。

出演はしない。

いつも通り準備に慌ただしいなっきーとは違い、すこぶるお気楽だ。

段取りやら流れやら、ショーのことを一切考えることなく電車に揺られながら埼玉に到着すると、いつも通りなっきー号は待ち構えていた。

相変わらずなっきーは車の中で顔をつくっている。

車を走らせること10分弱。

本日の現場である幼稚園に到着。

ようやく自分のやるべき仕事にとりかかる。

荷物を運び終えた今回のステージがこちら。

ここが華やかな舞台と変わるのだ。

音響は僕が、ステージはなっきーが組み立てる。

いつもの分業作業。

なっきーの支度が整った(ように見える)ステージ。

でも待って。

この子たち(↓)の中身は空っぽ。

ここからがなっきーのわちゃわちゃ劇がはじまる。

「控え室で風船ひねります!」

そう、ここから本番までの時間が勝負。

空っぽの“あの子たち” を抱えて控え室に走ります。

廊下でポーズまで決めて呑気なものだ。

しかしこの園の天井は高く、実に立派な建物だ。

控え室に入ると、机の上にはなんと…..

「お召し上がりください」とお菓子とお茶が!

さらには色んなところにこんな張り紙が。

好奇心旺盛ななっきー様への注意事項だろうか。

もちろんさわらせてはいけない。

お菓子の中身は大好きなラスク。

本番までの僕の仕事と言えば、風船が詰め込まれた“あの子たち”をステージに並べることと、ショーがはじまる時間になったらなっきー様をお迎えにくること。

それまでは暇である。

暇なので食べる。

なっきー様は膨らます。

平和だ。

平和と戦争を同じ部屋の中で共有している。

さて、ショータイム5分前。

ショー前の仕事を終えてステージ脇にスタンバイするなっきー様。

ここからが僕の今回1番の仕事。

CDのスタートボタンを押し、音響を操作する。

ステージに飛び出し、元気いっぱい子供たちと声を出しあうなっきー様を見届けたあとは、合間を見計らってこのブログ用にうろちょろしながら写真をパシャリ。

音出しのタイミングやボリューム、マイクの調節をしながら気にかけるのはやはりあの事。

今日はどこで恒例のアレが飛び出すのか。

なっきー様の足元にご注目いただきたい。

閉じてる。

まだ冒頭5分だ、当たり前か。

15分ほど経ち、先生にもお手伝いいただく時間。

先生のハッスルぶりに、子供たちの笑い声と興奮の熱があがり始めるこの時間。

なっきー様、少し緩みはじめているような気がするが…..。

いや、まだセーフといっていいだろう。

さぁ、先生たちの頑張りがマックスになる頃。

なっきー様のお股もマックス!

マーーーーックス!

いや今回は実に早かった。

そしてあまりに足の間の距離が広かった。

そんなことも構うことなくショーは進んでいく。

控え室で仕込んだ風船が、“あの子たち”の中からどんどん飛び出す。

緩んだ足元のままひねる。

くっつけて、またひねる。

会場の中にも溶け込み、ひねる。

歩き回り、よく喋る。

風船の動物と共に体を張る。

よく動き、爆笑をとる。

うん、これがなっきー様のステージだ。

「次は体を動かすよ!みんな立ってぇ〜」

事件は起きた。

体の部位がたくさん出てくる英語の歌。

歌の通りに体の部位を触っていき、どんどん曲が早くなって子供たちも笑いながら楽しむお馴染みの歌。

なっきー様は、この歌の日本語バージョンをよくやる。

なっきー様の日本語バージョンは触る箇所が若干異なり、練習ではみんなも「へぇ、そうやるんだ」と素直にマネして覚える。

バリバリに日本語バージョンを練習させ、「ミュージックスタート!」

音楽が流れ、元気いっぱいノリノリにリズムを刻むなっきー様。

歌いだすと会場の空気が固まった。

なっきー様は堂々と英語歌詞を歌っていたのだ。

何度も同じフレーズを繰り返す曲なので、2番は日本語バージョンやるのかなと期待した。

2番も英語だった。

なっきー様は迷うことなく、2番も3番も4番も英語バージョンでシャカリキに体を動かしている。

しかも自分も曲の速さに追いつけないので爆笑している。

会場のみんなもそれにつられて笑っている。

この曲のラストは超高速。

英語歌詞どころか動きもままならないまま、ゲラゲラ笑いながらやりきったなっきー様。

結局最後まで英語バージョンで終えたのだ。

何が怖いって、何も気づいていないこと。

恐るべしなっきー様。

ラストはみんなで元気いっぱい声を出す歌を歌いきり、一旦バイバイして舞台袖に帰ってきたなっきー様。

この一枚は、失敗を悔やみ涙する様子ではない。

やりきって帰ってきて「汗と鼻水が凄いのぉ!」

の一枚だ。

再び会場から「なっきー!」の呼び声が上がり、手を振って登場し、笑顔を振りまくなっきー様。

深々とお辞儀をしてお礼と嬉しさを述べる。

なっきー様はこの日もやりきった。

ショーを終えるといつもの「ステージで写真撮って!」の強制撮影会。

「もう1枚!もう1枚!」

はいはい、一番いいのを選んだよ。

ショーを終えるとあとは片付け。

もちろん分業だ。

荷物を運び終えるとなっきーが何かを探している。

これもいつものアレだ。

車のカギがなくなるのなんていつものこと。

僕はもう、呆れることすらせずに声をかける。

「恒例のアレ?」

本人も当たり前すぎて焦りも困りもしない。

「そう、いつものやつ」

この日は2分くらいで見つかりました。

誕生日にせっかくプレゼントした『鍵の場所を音で教えてくれる装置』も、電池がなくなったので持ってきてなかったそうだ。

この鍵探しの時間も、仕事の日の流れに組み込まれている。

僕の仕事に『鍵の管理』が増えないことを祈りたい。

さて、現場の帰りにはいつもの美味しいランチが待っている。

今回も園で教えていただいた場所。

有機野菜と絶品ハンバーグのランチで心もお腹も満たされました。

なっきー様も御満悦の様子。

食事をしながら試しに聞いてみた。

「ねぇ、日本語バージョン練習させといて堂々と英語バージョンでやりきったの気づいてた?」

返事は予想通りだった。

「え?ほんと? ぜーんぜん気づいてなかった」

………….。

返す言葉などない。

本来ならばこれで解散なのだが、数日後に迫っているポコピカソンのステージ内容が全く固まっていない。

このあと場所を変えて打ち合わせがあるなんて、考えたくない。

せめてこの美味しいハンバーグを食べて、一瞬だけでも現実逃避しようと目を閉じるカナトであった。

その現場のお話は、またの機会に。

カナト